低山でも冬山は舐めたらダメ!低体温症の防止や事前に注意すべきこと。
最終更新日 2019.3.5
寒波が来てますねー 寒いですねー
寒波と聞くとソワソワしてしてしまうのがハイカーの性。牧ノ戸峠のライブカメラを頻繁にチェックしたりしてw
雪をまとった山は本当に美しく、ここ数年はSNSの影響などもあって、積雪期の登山者数はかなり増えています。
しかし、雪山の厳しさを知らずに、安易に入山するハイカーが多いのもまた事実。
実際に、ぼくはこれまでに九州の雪山で低体温症の一歩手前(もしくは初期段階)になっている人に何度か遭遇したことがあります。
※低体温症は段階が進むと最終的には凍死に至るとても危険な症状です。
そのため、特に登山初心者は予め冬山の厳しさを知り、十分にその対策を講じて入山しなければなりません。
こちらの記事では、今極寒の中で体を冷やさないためにはどうすれば良いかということを中心に、事前に用意した方が良いものなど、初心者の方が参考になる内容をぼくなりに書いてみたいと思います。
●目次
アイゼンがないのは問題外!
・冬山のアウタージャケットは防風性能が重要
・重視すべきは防風性能
・結局、レインウェアとハードシェルは明確な違いはない?
インナーのレイヤリングは保温性を重視
・ベースレイヤー(第1)、ミドルレイヤー(第2)
・第3レイヤー
それでもなるべく濡れないようにすることが重要
ウェア関連で初心者が見落としがちな点
・耳、顔、襟元のガード
・手の保護
冬靴はいらないけど、冬用のソックスは必須
温かい飲み物や食べ物を摂取する。
まとめ
アイゼンがないのは問題外!
ほとんどの方がご存じかと思いますが、アイゼンとは雪面や凍結路で滑らないようにシューズのソール(底)に装着する金属の爪がついたギアです。
標高が1000mもない低山で、まだその一体で一度も雪が降っていないなら不要かもしれませんが、そうでなければ、チェーンアイゼンか軽アイゼンは必須装備です。
一度でも雪が降っていれば、それほど寒くない日であっても、登山道の中には陽の当たらない場所や、冷たい風が吹き抜ける場所は、踏み固まった雪が溶けずに凍結していることも珍しくはありません。
しかし、下界ではなく山中で雪が降ったかなどは、情報が少ない山では確認のしようもないので、結論としては、12月以降で一度でも寒波が来ているなら、基本的には装備に含めるべきだと思います。
ちなみにアイゼンとは、一般的に大きな爪が10本〜12本あるような本格的なものを指すのに対し、チェーンアイゼンや軽アイゼンはちょっと違うので、詳しく説明しておきましょう。
- チェーンアイゼン、チェーンスパイク
- 簡単に言うと、シューズの上から履くような形状になっていて、アッパー側は履くときに伸び縮みするようにゴムになっていて、ソール側は小さな爪が15本〜20本ほどついていて、アッパー側のゴムとソール側の爪がチェーンで繋がっています。
爪が小さい(短い)ことと、カカトから爪先までまんべんなく爪があるため、扱いやすいのが特徴です。
しかし、新雪などの柔らかい雪上では、ソール全体に雪がついて、爪も覆ってしまうことがあり、そうなると、その都度雪を落とす必要があります。
また、爪が小さい(短い)ため、足が沈むような深い雪には効きませんが、凍結した硬い路面では非常によく効きます。 - 軽アイゼン
- 爪が4本〜6本程度のもので爪の大きさは通常アイゼンよりは多少小さいものが一般的です。
チェーンアイゼンと比べるとやや大きいものが多く、それなりの雪が降った後に踏み固まった路面ではよく刺さって効く反面、雪が浅かったり氷のように固く凍結した路面では扱いづらいです。
また、爪が少ない分、ソールの中央部を中心に爪が配置されているので、爪先やカカトには爪がないものがほとんどなので、勾配がきつい凍結路面では爪を効かせづらいのが難点です。
上記のような特徴の違いから、状況によってどちらが良いかというのは当然変わってきます。
九州の山は絶対的に雪が少いことや、山行中に脱着をする場面も多いことなども踏まえ、雪山初心者の方であれば、まずは手軽なチェーンアイゼンを購入して装備に含めることをおすすめします。
↓こういうやつです!
冬山のアウタージャケットは防風性能が重要。
冬山(特に)雪山ではハードシェルを使用するのが一般的です。
ハードシェルの定義は明確に決まっていませんが、ざっくり言うと防水性、防風性、耐久性があって、その名の通りで硬くてゴワゴワした感じのジャケットのことです。
ぼくも冬用に一着FINETRACKのハードシェルを持っていますが、ハードシェルはとにかく値段が高い。。
安くても40,000円前後からといった印象で、「雪山なんて年に1〜2回しかいかない。」という人には手が出にくいと思います。
- 本当に冬山はハードシェルが必要なの?
結論を先に言うと、レインウェアでも十分に代用可能です。
ハードシェルは冬期アルパイン向けに作られているので、九州の雪山ではオーバースペックとなるケースも多いですし、そもそもレインウェアも防水性に加えて防風性を備えているものがたくさんあるので、必要十分だったりします。
重視すべきは防風性能
レインウェアなら防水性能は問題ないという前提で話します。
どれだけ日常で寒く感じる気温でも、山行中は動いているので:冬山だって暑くなって汗をかいたりします。
しかし、樹林帯を抜けて稜線に出ると、強風にさらされて体感温度が10度下がるなんてことはよくある話で、そこで一気に体を冷やすことを避けなければなりません。
そこで重要になるのが防風性能ってことになりますが、防風性能はレインウェアよりハードシェルの方が優れている理由はありません。たぶんw
いや、「何がどうだから防風性能が優れている」ってことはどのメーカーのカタログを見ても書いてないんですよ。つまるところ、防風性能って生地の厚さによるところが大きいんだと思います。
それでいけば、おそらくペラペラのレインウェアでなければ、それなりの防風性能があると思っていいはずです。具体的な数値で言えば、20デニール以上はあればいいでしょう。(レインウェアでも40デニールぐらいあるものもあります。)
あとは、その下のレイヤリングにもよりますし、風速が20mもあるような気候条件だとその限りではないのは言うまでもありません。
結局、レインウェアとハードシェルは明確な違いはない?
余談ですが、結局レインウェアとハードシェルって何が違うの?って話です。
レインウェアにもある程度の防水性と防風性があるということになると、あとは耐久性ぐらいしか違いはありません。
前述した通り、ハードシェルは冬期アルパイン向けなので、雪や氷でガシガシ擦れたり、転倒した時の衝撃などで、簡単に破けたりしないように耐久性(耐摩耗性や対衝撃性)を高めているものが多いわけです。
耐久性は生地の素材と厚さ、構造によりますが、これも結局は防風性と同じでレインウェアよりもハードシェルの方が、より頑丈に作られているものが多いというだけです。
その他には、ハードシェルの方がより冬期アルパイン向けかつ玄人向けということで、色々と機能性に優れていることは多いですが、結局はその程度の話です。
結論。レインウェアとハードシェルに明確な違いはない。
だから、公然と「冬山にはハードシェルが絶対に必要!」と言っているような人がいたら、メーカーに踊らされているおバカさんか売りたいだけのメーカーの人間と思って良いですw
ただし、2000mを超える山の厳冬期など、より過酷な山行の場合にハードシェルのようにハイスペックな方が確実であり、ある程度の耐風性能レインウェアでも十分だと言えるのは、九州の一般的な冬山(雪山)という前提での話あることを最後に書き添えておきます。
インナーのレイヤリングは保温性を重視
レインウェアやハードシェルは風雨に強いため、濡れや風による致命的な冷えから守ってくれる一方で、それ自体に保温性はほとんどありません。
そのため、保温性を重視したレイヤリングが必要になります。ただし、寒さへの耐性はかなり個人差があって、これがベストっていうことはないので、こちらではぼくのレイヤリングを中心に紹介しておきます。
ぼくの場合は、
インナーだけで3レイヤーが基本。
低所では1枚脱いで2レイヤー。
停滞時には1枚足して4レイヤーです。
- アウターを含めると5枚.. 着すぎ?w
レイヤー別にもう少し詳しく解説していきましょう。
ベースレイヤー(第1)、ミドルレイヤー(第2)
これはもうメリノウールでまず異論はないでしょう。
メリノウールは保温性が高く、濡れても保温性を損なわない。その上、柔らかくて着心地がいいので文句のつけようがほとんどありません。メリノウールを知らない人はググってください。腐るほど情報出てきます。
ちなみにベースレイヤーのさらに下に着用するファイントラックのドライレイヤーもおすすめです。(ぼくは敏感肌で合わないので使ってません。)
ミドルレイヤーは、特別冬山だからどうということもなく、ぼくの場合はいつもと同じです。なるべく保温性、蒸散性に優れいているものが良いでしょう。
ここまでは多くの方はそれほど変わらないと思いますが、次からが個々で分かれるところでしょうね。
第3レイヤー
ぼくの場合、第3レイヤーは化繊のインサレーションがメインで、1月2月の寒波でくじゅうなどそれなりに標高のあるところ行く場合は、厚手のフリースに変更します。
第3レイヤー選択時のポイントは保温性があり、なおかつ濡れても保温性を損なわないことです。
なぜなら濡れるからです。
なぜ濡れるかというと、冬山では外気温と体温の温度差が著しいので結露が起こりやすいからです。もうそれはゴアテックスの透湿性ならとかそんなレベルではないです。
ぼくは脇の下のベンチレーションをずっと開けっ放しにしていても、シェルの内側が結露でバキバキに凍ったこともあります。
- もはや氷のジャケットw
それなりの運動量になったら、どれだけ透湿性に優れていても、ベンチレーションで換気をしても追いつかないってことです。蒸気が排出しきれなければ冬山ではすぐにシェル内で結露します。
つまり、シェルの防水性とか透湿性とかそんなことではないんです。濡れることを前提に考えなければいけません。
そう考えると、アウターの下にダウンとかは最悪です。びっしょりのぺったんこになって保温性はゼロです。それに比べて化繊のインサレーションは濡れに強いです。
それとフリースも起毛しているせいか、結露に対しては濡れづらいように感じてます。
ちなみに小屋で休憩するときや停滞時にぼくがもう一着追加するときは、この第3レイヤーの下にダウンを着ます。保温性の高いダウンは肌に近い方が効果的なので(ロフトが潰れなければ)、ダウンのインナー使いは抜群に温かいです。
それでもなるべく濡れないようにすることが重要
どれだけ高機能なウェアを駆使してレイヤリングを工夫しても、人間は暑くなれば汗をかきます。汗をかけば衣服はどうしたって濡れます。冬山では一度濡れた衣服は乾きません。
それを防ぐには「暑くなる前に脱ぐ」「寒なる前に着る」という登山の基本を徹底するしかありません。
しかし、周りを見ていると、その対策ができない人が多いように思います。
例えば、登山口から出発した直後は登りがきつく樹林帯で風もなく、すぐに暑くなるのが普通です。それでも出発前は寒いので、どうしても着込んでしまいがちです。分かってるなら薄着で出発しろってことです。
あと、脱ぎ着はパーティ足を止めるので、それに気を遣って我慢する人も結構いる気がします。そんなことをいちいち遠慮するなってことです。最悪の事態を招いた場合はもっと迷惑かかりますからね。
ウェア関連で初心者が見落としがちな点
ここまでは、初心者でも気になって自分で調べたりすることかと思いますが、ウェア関連でつい見落としがちなポイントをいくつかあげておこうと思います。
耳、顔、襟元のガード
耳が露出した状態で暴風雪の稜線なんか歩いたら、耳がちぎれるかと思うぐらい痛くなります。
ハードシェルならフードで確実にガードできますが、レインウェアだと絞りのないものがあるので、それだとちょっと辛いですね。
ニット帽では耳全体をガードしきれないし、帽子に耳あてがついているものもありますが、あごの下で留めるベルトがないのは問題外だし、ベルトがあっても風は入り込むでしょうね。
絞りつきのフードのついたものが確実ですね。ちなみにインナーに使用しているインサレーションのフードでもあればだいぶ違うと思います。
それと、個人的には口元から耳まで覆えるようなネックウォーマーがおすすめです。吹雪の際は首元(顎まわり)から雪が侵入するのも防いでくれます。
↓こんな感じで絞るコードがついてるものが良いです!
手の保護
冬山用のアウターは買っても、どうしてもグローブは後回しになりがちですよね。冬用ではない薄手のグローブを使用している人をよく見かけます。
この辺の耐性も個人差があると思いますが、指が本格的にやられると、トップスのジッパーすら開け閉めできなくなります。
できれば冬用グローブが欲しいところですが、予算がない場合は冷凍庫などでの防寒グローブの「テムレス」でもある程度は対応するみたいなのでありかもしれませんね。
↓テムレスは雪山でよく見かけます!
- めっちゃダサいけど、今年は黒が発売されたらしいよ!
冬靴はいらないけど、冬用のソックスは必須
中綿入りの冬靴や本革の重登山靴などは要りませんが、乾燥路面に比べて雪上はかなり足が冷えます。特に指先は痛くなることも良くあるので、最低でも冬用のソックスを使いましょう。
フィッツのソックスは定評があり、ぼくも使ってますが、高品質のメリノウールで保温性が高いのはもちろん、その名の通りでフィット感がよくて履き心地も良いです。
ぼくは、0度前後までならRugged Crew(ラグドクルー※中厚手)、-5度以下ならExpedition Boot(エクステンションブーツ※厚手)を使用しています。
※Expedition Boot(エクステンションブーツ)は、シューズがワンサイズ大きくないときつくなるぐらい厚いです。
↓ラグドクルーでもそこそこ温かいですよ!
ちなみにぼくは靴下に貼るホッカイロとかも使ったりします。稜線出る頃には冷たくなりますが、それでもだいぶ違いますよ。
↓ぼくはこれを箱買い(15足入り)してますw
温かい飲み物や食べ物を摂取する。
これはわかりやすいですが、体を中から温めるという意味でもやっぱり重要ですし、胃腸で消化活動が行われるので、空腹よりも体が温まりやすいというのもあるようです。
サーモスの通称「山専ボトル」はご存知ですか?
保温力と軽量性に優れた山用として販売されている水筒で、下山しても熱湯を注ぐほどの保温力があります。
500mlと900mlがあるのですが、ぼくは両方持っていて、日帰りの雪山の際は500mlにレモネードを入れて小休憩で飲み、900mlには熱湯を入れて、カップ麺やコーヒーなどにそのまま使います。
気温が氷点下になるような雪山では湯沸かしにも時間がかかるので、そのまま使えない場合でも、お湯から沸かせばすぐに熱湯になるので便利です。
一つでも持っておく価値はありますよ。
↓大は小を兼ねるので、一つだけなら900mlをおすすめします!
↓スタンレーのフードジャーなら冬山で温かいスープが飲めます!
ガソリンバーナーで暖をとる。
これはあまり見かけませんが、外から直接的に体を温められるので、体が冷えきった時などにはかなり有効です。
小屋内ではもちろん、暖気を逃さないようにグランドシートのようなものを羽織れば、外でもかなり温まることができます。
当然ながら、ガスバーナーでは火力が弱すぎるので無理です。
ガソリンバーナーは所有している人自体が少ない印象ですが、火力が桁違いなので、冬山に行くなら持っておくと確実に活躍してくれますよ。
ちなみに、ぼくが使っているSOTOのムカストーブは、プレヒート(余熱)が必要ないので楽な上に、赤ガス(ガソリンスタンドのガソリン)が使えて、コスパが最強なので、ガソリンストーブなら断然おすすめです!
↓後から400mlのボトルを追加すればシーン別に使い分けれて便利です♪
まとめ
ぼくがこれまでの経験から、初心者に役立ちそうな情報を紹介してみましたがいかがでしたでしょうか?
ぼくも雪山に行くようになったのは3年前ぐらいからのことですし、九州以外の雪山はさほど行ってないので、あくまでも九州での雪山の話と思ってください。
今回ぼくもこの記事の投稿にあたり、いくつものブログなども見ましたし、これまでに自分より登山経験の長い方にアドバイスをもらったこともありますが、オーバースペックだったり、誰かの受け売りと思われるような的外れなアドバイスも多かったので、自分なりにリアルで役立つ情報にしたつもりです。
しかし、個人差があったり、条件はその時によって変わるので、これで絶対大丈夫ということはありません。
雪山に限りませんが、一番大切なのは絶対に無理をしないことです。不安を覚えたら撤退(引き返す)することが一番です。誰もあなたをバカにしませんし、山は逃げませんので。
今年は暖冬ということですが、寒波がくればそれなりに冬山は楽しめるタイミングは十分にあると思います。
事故などないように安全に冬山を楽しみましょう。