[図解]こうしてトレイルランレースではルートロストが多発する![テスト問題あり]
最終更新日 2022.7.26
先日、熊本県は水上村で開催された「第3回 Mizukami Moutain Party(水上マウンテンパーティー)」に出場しました。
水上マウンテンパーティーは噂にたがわず九州屈指のハードレースだった!
水上マウンテンパーティーは、九州屈指のハードコースで知られるレースと同時に、ルートロストが非常に多いレースとして知られています。
それもそのはず、第2回のレースでは、コース上の至るところで集団ロストが多発したり、10回以上もロストしたなんて方もいたようです。
しかも、ハードなコース設定も相まって、第2回の完走率は、、
なんと36%。。
セラパパさんという方のブログで、ロストしまくった壮絶な様子が綴られてました。この方の記事おもしろいので見てみてください(笑)
https://ameblo.jp/serapapa/entry-12401129741.html
ぼくが出場した第3回では、目印のテープによる誘導がかなり改善されていたようで、そこまでルートファインディングが難しいとは感じませんでしたが、それでも何度か他の選手のロストを目の当たりにしました。
今年7月には野沢温泉村で遭難事故があり、このブログでも取り上げましたが、この事故もルートロストが発端となった事故です。
野沢温泉村のトレラン遭難事故はなぜ起こってしまったのか?
ぼくは今回のレースで、実際に選手がロストする様子や、ロスト地点の特徴などを知ることができました。
こちらの記事では、ルートロストによる事故などを減らすことを目的に、実例を取り上げながら、ぼくなりに対策を記しておきますので、トレランをされている方やこれからされる方に参考してもらえたら幸いです。
もくじ
トレランの大会で選手がコースを確認する方法
ルートロストの実例を挙げる前に、まず基本的なことを確認しておきましょう。
選手はトレイル上で、どのようにコースを確認するのか?
それは大きく分けて2つあります。
- テープや矢印看板などの印
- コースマップ(地図)およびGPXデータ
テープや矢印看板などの印
これは大会側がコース上に設置したもので、ほとんどの選手がこれを頼りにしてコースを進みます。
水上マウンテンパーティーは、ある程度の間隔でこのテープが設置されてました。
テープはや矢印看板は、1本道のルート上に確認の意味で付けてあったり、分岐地点で進行方向を示すように付けてあったりと、色々なパターンがあります。
選手はレース中に、一定の距離(または時間)を走っても、このテープが現れないときは、ロストしたことを疑って「テープがある箇所まで戻る」というのがセオリーであり、大会側からもそう指南されます。
コースマップ(地図)およびGPXデータ
大会オフィシャルサイトなどで、ダウンロードできる印刷用の地図が用意されていることがほとんどです。
しかし、読図スキル(地図読みの能力)のない選手も多いですし、レース中に地図を開くという作業はどうしてもひと手間かかるので、実際に紙の地図を活用している選手はかなり少ないと思います。
最近では、「スマホのGPS地図アプリ」や、ガーミンやスーントなどの「GPSウォッチ」などに読み込んで、ルート表示ができる「GPXデータ」を大会側が公開している大会も多いです。
水上マウンテンパーティーで提供されていたGPXデータ(ショートの一部)
また、水上マウンテンパーティーを運営する「ユニバーサルフィールド」の大会では、YAMAPで地図が提供されています。
現状は、レース中に地図を見ている人がいるとすれば、スマホが一番多いと思います。
それでも起こる!ぼくが見たルートロストの実例
大会側でこれだけの準備がされているにも関わらず、水上マウンテンパーティーではやっぱりルートロストをする選手は多数いました。
なぜでしょうか?
理由はそれぞれに色々とあると思いますが、まずどのような状況でルートロストが発生していたのかを紹介しながら、傾向と対策なども考えていきたいと思います。
ケース.1 ぱっと見や雰囲気による思い込み
難易度:☆
これはレース序盤、5km前後の地点での出来事です。
ぼくの少し前を並んで先行していた3名が、分岐をすーっと右へ進んでいきました。
その直後にぼくも分岐地点にさしかかりましたが、違和感を覚えたんです。
あれ?テープがない。。
この分岐には、行き先を判断するテープがなかったんです。
つまり、通常であれば分岐にさしかかった時点で「これはどっちかな?」となるはずなのに、先行していた3名は、なんの躊躇もなく、右へ進んでいったわけです。
すかさず、ぼくはスマホの地図でルートを確認しました。
正しいコースは、先行者が進んだ右ではなく「左」でした。
これはその時の実際の写真です。
先頭の方が右に進路をとっているのがわかると思います。おそらく後ろの二人は付いていっただけ。
3名とも、分岐で立ち止まったり、悩んだり素振りは一切ありませんでした。
でも、左も明らかな登山道だったんです。
それなのに、なぜ迷わず「右」に進路をとったのでしょうか?
左の登山道には倒木が横たわっていたんです。
上からの図解
もちろん、跨げないような大きな倒木ではなく、普通に跨げるサイズの倒木です。
おそらく、その倒木という障害物が目に入った時点で、意識的か無意識的にかはわかりませんが、「倒木があるからこっちではない。」と勝手に思い込んでしょうね。
あの分岐で、確認もせずに右に進路をとるなんて、それぐらいしか考えられません。
ちなみに、すぐに「多分そっちじゃないですよー!」とぼくが声をかけたので、3人はすぐに戻ってきました。
ケース.2 細心の注意が必要なポイント(テスト問題あり)
難易度:☆☆☆
次は非常に難しいパターンです。
一緒にレースに出た友人も、ここだけはロストしたそうです。
ぼくは、ちょうどその地点で、間違った道から戻ってくる選手と遭遇したので、運よく間違えませんでしたが、それがなかったら間違いなくロストしていたと思います。
ここで問題です
もし、図のような感じだったら、みなさんはどう思いますか?
左の林道を進む!
- 残念!!笑
そう答える人が多いと思います。
実際のコースでも、そう思って左へ進路をとった人が多かったんです。
ところが、、
正解はこうです。
実は、林道と林道の間に尾根道があったんです。
ずるいわー、さっきの図にその尾根道は書いてなかったもん!
はい、確かに書きませんでした。でも、実際にこの分岐はかなり鋭角で、パッと見だと尾根道の入口はまったく視界に入らないんです。
だから、テープは尾根道の入口を示すようについてるんです。
それにも関わらず、最初から選手は「ここは右か?左か?」という考えしかないので、テープが左の林道を示していると思い込むわけです。
これが、大会側の意図したトリックだったとしたら、もうお見事としか言いようがありませんね。
ぼくのように偶然に回避した人を除けば、おそらく半数以上がここでロストしたのではないかと思います。
ちなみに、左の林道は200mぐらい先で、行き止まりだったそうで、そこまでの大事故にはならなかったみたいです(苦笑)
ケース.3 脇道にそれる見落としやすい分岐
難易度:☆☆
上からの図はこんな感じ
ポイントは直進がメインの登山道ということと、分岐地点の付近が不明瞭だということです。
疲れて集中力が散漫になっていると見落としすいパターンです。
実際に、水上マウンテンパーティーでは、後半(ショート)の結構ヘロヘロになっているような地点で、このような分岐があって、危うく見落とすところでした。
心拍数が上がって、なんとか足を前に運んでいるような状態だと、視野がすごく狭くなっているので、特に注意が必要ですね。
ルートロストの原因と対策
まず、原因は大きく分けて3つあると思います。
- トレイルに慣れてない
- 集中力の低下
- 地図で確認しない
対策も含めて、詳しく説明していきましょう。
トレイルに慣れてない
これはやっぱり大きいと思います。
そもそも普通に登山をしていても、道迷い遭難が後を絶たないわけですから、それを走るとなれば、道を間違えるなんて当然のことだと思いませんか?
しかし、登山をしていると、道を間違えたり、不明瞭な道を歩いたり、そういった経験を重ねることで、ルートファインディングの能力が自然と備わっていきます。
それは、当然トレイルランニングでも活かされるわけで、逆にいうと、トレイルランナーには必須の経験ということになるでしょう。
どのぐらい経験が必要なの?
どんな山かにもよりますが、月1ぐらいで色々な山に行ってみるのがいいと思います。
- 樹林帯の多い低山が、分かりづらくてオススメです!笑
疲労による集中力の低下
これは、もうそのまんまですね。
疲れてくれば、集中力が低下するのは当たり前なので、なるべく疲れないように、日頃から頑張って練習するしかないでしょう(苦笑)
あとは、特に下りで注意した方が良いと思います。
なぜなら、下りはスピードが出る(出す)上に、視線が足元にいく時間が長く、分岐や目印などを見落としやすいからです。
そこに疲れも重なれば、なおさらですね。
- 下りでロストすると、戻りは登りになるので地獄です(苦笑)
地図を見て確認しない
これ、実は重大な話です。
ぼくは、水上マウンテンパーティーで、ロストした人を含めて、進路に迷っている人を何度か見かけました。
あれー?これどっちだろう?
という感じです。
しかし、その中に地図(スマホも含め)を見ている人は一人もいなかったんです。
正直、これには驚きました。
明確に進路を示している「テープ」や「矢印看板」がない状態で、地図を見て確認しないのなら、それって「ただの当てずっぽう」ってことですよね?苦笑
ぼくには、その思考が理解できませんが、考えられる理由としては「地図を持っていない」か「面倒くさい」かのどちらかでしょうか。。
地図を持っていない
- もうこれは論外ですよね。。
GPXデータとかよく分からないんだもん。
そこは覚えようよ。と思いますが、今回の場合は、YAMAPでもデータが公開されてましたからね。。
それに、もし分からないなら、せめて大会サイトから地図(PDF)をダウンロードして、印刷してこようよ。って話ですよね。。
もし、今これを読んでいる方で、登山用の「GPS地図アプリ」を使ったことがいれば、これを機にYAMAPをインストールして、山で使ってみてください。
めちゃくちゃ簡単で便利ですから。
男性でデジタルに強い方であれば、ぼくも使っているジオグラフィカというアプリがオススメです。
面倒くさい
地図は3分あれば確認できます。慣れていれば1分です。
ロストしたら、5分〜10分ぐらいのタイムロスは普通にあり得ます。
- どっちが面倒くさいかよく考えて!笑
最後に..とにかく山に行く!とにかく練習する!
いかがでしたか?
少しは参考になりましたでしょうか?
山はそれぞれ違うので、ロストのパターンや原因などは、ここに書いただけでなく、様々なケースがあると思います。
しかし、蓋を開けてみれば、山に慣れてないであろう人がロストしまくっているのが現実です。
水上マウンテンパーティーは、特にルートファインディングが難しいコースなので、確かに特殊かもしれません。
それでも、山に慣れている人の方が、絶対的にロストの確率が低いという事実は変わりません。
それぐらい、トレイルというのは街中とは全く違う特殊な環境ということなんです。
さあ、週末は山へ行きましょう♪